ZenTech
DX・レガシーシステム
2025-04-05

ITシステム2025年の崖:レガシー問題がもたらす危機と背景

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」について、レガシーシステムの老朽化・IT人材不足が引き起こす最大12兆円の経済損失リスクと、その背景にある企業文化・教育問題を詳細解説。

対象読者:企業経営者、IT部門責任者、システム開発関係者、政策立案者
ビジネス文脈:日本企業のDX遅れと国際競争力低下、構造的なIT人材不足問題
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はじめに・「2025年の崖」とは何か?

ZenTechはシステム開発DXにより、世の中のIT化/DXを促進する会社です。

今回の記事では、日本が今まさに直面している問題、「2025年の崖」について解説します。

目次

  1. はじめに・「2025年の崖」とは何か?
  1. DXが進まず12兆円の経済損失が生まれる理由

- 企業の競争力低下→ 産業の衰退

- IT人材不足の深刻化 → デジタル産業の停滞

- ユーザ企業のベンダー依存・老朽化システムの保守による人材枯渇・若手人材活用阻害の問題

  1. 具体的な影響シナリオ

- ケース①:銀行・金融業界

- ケース②:製造業(サプライチェーンの崩壊)

- ケース③:行政・自治体(公共サービスの機能不全)

  1. なぜこのような事態になっているのか?

- 問題1. 企業文化・ビジネス慣習

- 問題2. 教育・人材育成の問題

  1. 「2025年の崖」を乗り越えるための具体策

「2025年の崖」とは、2025年頃に基幹システムの老朽化・ブラックボックス化やIT人材の大量不足(約40万人超)といった問題が一気に顕在化し、日本企業が深刻な経営リスクに直面するという警鐘です。経済産業省の試算では、この問題を放置すると2025年以降に年間最大12兆円もの経済損失が生じ得るとされており、レガシー刷新なくしてDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功はないと強調されています。

現状、多くの企業が複雑化・老朽化した既存システムを抱えたまま運用を続けており、それがDX推進の大きな足かせとなっています。基幹系システムの約6割が導入から21年以上経過する見込みとも報告されており、積年の機能追加や改修で技術的負債が蓄積した「レガシーシステムの塩漬け」状態にある企業も少なくありません。

この結果、保守費用の肥大化や属人化した維持管理によって新たなIT投資資金や人材が確保できず、サイバーセキュリティリスクも高まる負のスパイラルに陥っています。一方、こうした受託開発を担うベンダー側(SIer)も、レガシー保守にリソースを取られ最新技術人材の育成が遅れる、クラウドサービス開発の波に乗り遅れるといったリスクを抱えており、業界全体で早急な対策が必要とされています。

DXが進まず12兆円の経済損失が生まれる理由

複雑化・老朽化した既存システムが放置された場合、2025年以降に予想されるIT人材の引退やシステムサポート終了などに伴う経済損失は、最大で12兆円/年(現在の約3倍)に上ると予測されています。この数値は、国内におけるデータ損失やシステムダウンによる2014年の損失額(約4.96兆円)を基準に、レガシーシステム起因の障害リスクが今後約3倍になると仮定して導き出されています。

企業の競争力低下→ 産業の衰退

日本企業の多くは、古いシステムの維持に人材や資金を取られ、新しい技術やデジタル変革への投資が後手に回っています。一方、海外企業、特に米国や中国のテック企業は、AIやクラウドを活用し、データを中心にビジネスの効率化・拡大を加速しています。

IPAのDXレポートでは、「既存システムの運用とメンテナンスは年々コストが増大するのみならず、歴史的に積み上げられてきた機能に対して、全貌を知る社員が高齢化したり、退職したりして、更新におけるリスクも高まっている」ことが明記されています。

その結果、DXの遅れた日本企業は徐々に国際競争力を失い、世界市場でのシェア低下という深刻な状況に直面しています。

IT人材不足の深刻化 → デジタル産業の停滞

IT業界において、日本では人材不足が年々深刻化しています。

2015年時点で約17万人不足していたIT人材が、2025年現在では約43万人まで拡大しているとされています。

ユーザ企業内にはシステムに精通した人材やプロジェクトマネジメントができる人材が不足しており、「ITエンジニアの7割以上がベンダー企業に偏在している我が国では、ユーザ企業としては、ITエンジニアの確保と教育も課題である。」とDXレポートでは述べられています。

また、老朽化システムの保守に特化した人材がリタイアすることで、メンテナンススキルを持つ人材が枯渇することも指摘されています。

ユーザ企業のベンダー依存・老朽化システムの保守による人材枯渇・若手人材活用阻害の問題

また、IT人材不足が深刻化する中でユーザ企業内のIT人材が限定的なため、「業務プロセスや周辺システムとの関係を明確にして、将来あるべきシステムのビジョンを描くことのできる人材がユーザ企業に不足しているため、ベンダー企業への依存度が高まっている。」と指摘されています。その結果、ユーザ企業はベンダー企業に依存せざるを得ない状況が続き、IT戦略やDX推進を主体的に進めることが難しくなっています。

さらに、「老朽化したシステムの仕様を把握している人材がリタイアすることで、メンテナンススキルを持つ人材が枯渇し、メンテナンスに若手人材を充てざるを得ず、その結果として先端技術に取り組む若手人材が離職してしまう。」とも指摘されています。このため、先端的な技術を担う人材の育成と定着も阻害されており、デジタル産業全体が停滞する一因となっています。

具体的な影響シナリオ

ケース①:銀行・金融業界

日本の銀行業界では、かつて数十年前に構築されたCOBOLを中心としたメインフレーム型の基幹システム(勘定系システム)を長年利用してきました。近年では、三菱UFJ銀行(BankVision)、三井住友銀行(SMBC Core System)、みずほ銀行(MINORI)、りそな銀行(Resona Core System)といった大手銀行各行が、すでに勘定系システムのオープン化を完了させています。また、多くの地方銀行においても、自前の基幹システムから「地銀共同センター」や「MEJAR」など共同利用型のオープン系システムへの移行を完了しています。

一方で、こうしたシステム刷新が一巡した現在、銀行業界におけるシステム課題の主軸は、基幹系システムの大規模刷新から、情報系システム(債権管理システム、営業支援CRM、コールセンターシステムなど)の再構築やDX化に移っています。これらの情報系システムには依然として老朽化した部分が多く、またFintechやAI活用による機能拡張や効率化のニーズも高いため、引き続き多額の投資や継続的な改善が求められています。

このように、銀行業界のシステム更新は次の段階に進んでいますが、情報系システムの改善や刷新が遅れれば、DXの推進や新しい金融サービスの提供に影響を与え、ひいては業界全体の競争力を損ねるリスクが残っていると言えます。

例えば、2023年10月に発生した全銀システムの障害では、金融機関間の振込み取引に影響を与え、多くの銀行で顧客の振込み操作が正常に処理されない事態となりました。この障害は、中継コンピュータの一部破損が原因とされており、システムの老朽化と維持管理の課題を示しています。

一方、海外ではAIを活用したデジタルバンクやフィンテック企業が急成長し、スマホでの取引が主流となっています。例えばイギリスのデジタルバンクであるStarling Bankは、オフラインの支店を持たず、郵便局ネットワークと連携して現金の預け入れや引き出しを提供しています。イギリスのRevolutはAIを活用してユーザーの財務分析を行い、支出と収入、貯蓄目標、請求書の比較などを可能にしています。

日本の銀行がDXに遅れると、こうした海外のデジタルバンクに顧客を奪われ、収益が減少する可能性もあります。結果として国内の銀行業界が縮小し、企業融資が滞り、経済全体の資金の流れが悪化することにもなりかねません。

ケース②:製造業(サプライチェーンの崩壊)

日本の大手製造業は、レガシーシステムで部品発注や生産管理を行っています。システム更新を怠ると、部品調達の遅延や生産トラブルが頻発します。ある部品メーカーのシステムが停止し、自動車メーカーへの部品供給が止まると、生産ラインがストップし、莫大な損害が発生します。製造業全体の信頼が損なわれ、海外受注が減少し、日本の輸出競争力も低下します。

2022年3月、トヨタ自動車の主要サプライヤーである小島プレス工業がランサムウェア攻撃を受けました。攻撃者は、同社子会社が使用していたリモート接続機器の脆弱性を突いてネットワークに侵入し、システムを暗号化しました。この影響で、小島プレス工業は部品供給が停止し、トヨタは国内全14工場・28ラインの稼働を1日停止する事態となりました。この停止により、約1万3,000台の生産が見送られ、サプライチェーン全体に大きな影響を及ぼしました。

このような事例を踏まえ、製造業におけるサプライチェーンのセキュリティ強化と、レガシーシステムの刷新が急務となっています。

製造業においてシステム刷新やレガシーシステムの問題が急務である理由のエビデンスとして、「既存システムがレガシー問題を抱えている場合、ハードウェア・ソフトウェアの維持限界がこない限り問題の重要性が顕在化せず、根本的なシステム刷新のインセンティブが生じにくい」といった内容の記載がDXレポートにもあります。

「ユーザ企業は、自身がレガシー問題を抱えていることに気付きづらい特徴がある。レガシー問題は発見されにくく、「潜在的問題」であるといえる。メンテナンスを行わず日常的に活用できている間はレガシーであることは自覚できない。ハードウェアやパッケージの維持限界がきたときにはじめて発覚する。」

特に、中小企業を含むサプライヤー全体でのセキュリティ対策の強化が求められています。

ケース③:行政・自治体(公共サービスの機能不全)

日本の行政機関や地方自治体では、多くの業務が古い基幹システムや紙ベースの処理を中心に行われています。そのため、老朽化したシステムのトラブルや、デジタル化の遅れによる行政サービスの低下が顕在化しています。

例えば、2022年12月に東京都多摩地域の自治体で、基幹システムの老朽化に伴う障害が発生し、住民票や戸籍の発行業務が1週間以上停止する事態が起きました。また、2023年8月には大阪府内の複数の自治体で税務システムの障害が発生し、住民税の請求遅延が発生、財政運営に影響が出るとともに住民サービスが混乱しました。

行政におけるデジタル化の遅れは、市民サービスの質を著しく低下させるだけでなく、緊急時に迅速な対応を妨げるリスクがあります。世界的に行政DXが進展する中、日本の自治体がデジタル化を推進できなければ、住民の信頼低下や行政運営コストの増大を招き、社会全体の競争力低下につながる可能性があります。

こうした課題への対応として、政府は「デジタル庁」を設立し行政システムの刷新を進めていますが、現場レベルでは依然としてDX人材不足や組織体制の硬直化が課題となっており、早急な対策が求められています。

なぜこのような事態になっているのか?

問題1. 企業文化・ビジネス慣習

問題1-1. 終身雇用・年功序列による意思決定の遅さ

日本企業は従来、終身雇用と年功序列を基盤とした組織運営を行ってきました。

DXレポートによれば、「多くの国内企業は終身雇用が前提のため、ユーザ企業においては、ITシステムに関するノウハウをドキュメント等に形式知化するインセンティブは弱い。そのため、ノウハウが特定の人の暗黙知に留まっている。」とされています。

また、「2007年問題(団塊の世代の大量退職)に代表されるように、大規模開発を行ってきた人材が現場から消え、システムがブラックボックス化している」という指摘もあります。

つまり、人材が長期間社内に留まる前提のため知識が特定個人の暗黙知に偏りがちで、文書化・共有が進まず、その結果ベテランが定年退職するとノウハウが失われ、システムがブラックボックス化するという問題です。

実際、2007年前後の団塊世代大量退職(2007年問題)でも大規模システム開発の担い手が現場から消え、多くの企業で同様の現象が起きました。

意思決定は合議制で段階を踏む傾向が強く、新規のデジタル施策導入にも時間を要します。実際、IMD(国際経営開発研究所 : International Institute for Management Development)世界デジタル競争力ランキングでは、日本企業の機会や脅威への対応の速さや企業の俊敏性が対象67か国中最下位(67位)と評価されています。

問題1-2. 短期的なROI志向によるIT投資の不足

日本企業は投資対効果を短期間で求める傾向が強く、長期視点のIT投資が不足しています。世界的には約89%の企業が「ITイノベーション投資をすべき」と考えているのに対し、日本では66%に留まっています。この結果、多くの企業でIT予算の大半が既存業務の維持に割かれ、新規価値創出のための投資はごくわずかです。経産省のDXレポートでも、「我が国企業のIT関連予算の80%は現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てられている。それにより、新たな付加価値を生み出すためのIT戦略に資金・人材を十分に振り向けられていない。」と指摘されています。

また、「短期的な観点でのシステム開発が結果として長期的な運用・保守費の高騰を招き、『技術的負債』となっている」とも記載されています。

問題1-3. SIer依存によるユーザー企業のデジタル戦略不足

「我が国では、ユーザ企業よりもベンダー企業の方にITエンジニアの多くが所属している。ユーザ企業のためにベンダー企業がITシステムを開発し納入する受託開発構造であるため、ユーザ企業内部にノウハウが蓄積しにくい。」とDXレポートでは指摘されています。

日本ではIT人材のうち事業会社内にいる比率が3分の1未満であるのに対し、アメリカでは約3分の2がユーザー企業側に所属しています。この違いは、日本企業がITを外注サービスとして捉え、自社内にノウハウが蓄積されていないことを示しています。その結果、社内に再構築の知見が蓄積せず、自力でDXに踏み出せない企業が多い状況となっています。

ZenTechではAIを活用した要件定義支援などの先端技術を提供することで、ユーザー企業がSIer依存から脱却し、社内にITのノウハウを蓄積できるよう支援していきます。

自社主導でデジタル戦略を推進できる基盤作りをサポートします。

問題2. 教育・人材育成の問題

問題2-1. 日本のITリテラシーの低さの要因

日本社会全体でデジタル人材の育成が遅れています。「問題1. 企業文化・ビジネス慣習」でも取り上げた通り、IMD(国際経営開発研究所 : International Institute for Management Development)の調査によれば、日本の「デジタル技術スキル」は対象国中ほぼ最下位レベルにあり、高度なIT人材だけでなく、平均的な従業員のIT対応力にも課題があるとされています。その背景には、教育現場での情報教育の遅れがあります。日本ではプログラミング教育の必修化が近年ようやく始まったばかりで、特に現在の40代以上の世代は学生時代に十分なIT教育を受けておらず、管理職層にもデジタル知識が不足しています。そのため、社内でDXをリードできる人材が乏しいという状況が生じています。

問題2-2. DXを推進できる専門人材の不足とその背景

日本国内では高度IT人材の需要に供給が追いついていない状況です。少子高齢化による労働人口の減少に加え、IT業界における人材争奪戦が激化しており、DX人材の採用難が深刻化しています。経済産業省は2030年までに数十万人規模のIT人材不足が発生すると試算しています。

「老朽化したシステムの仕様を把握している人材がリタイアしていくため、メンテナンスのスキルを持つ人材が枯渇し、先端技術を担う人材が離職してしまう実態がある。」とDXレポートでは指摘されています。

さらに、ユーザー企業内にIT人材が少ないため、既存社員をリスキリング(再教育)しようとしても、社内に十分な知識を持つ教育担当者がいないという悪循環が生まれています。「DX人材がいないからDXが進まない、DXを進めていないから社内に人材が育たない」という状況に陥り、企業は外部コンサルタントやSIerに頼らざるを得ず、結果的に内製化能力が培われない状況が続いています。

「2025年の崖」を乗り越えるための具体策

ここまで2025年の崖問題における危機と背景について見てきました。

次の記事(DX推進を成功させる3つの具体的手法)ではこれらの問題に対して具体的な解決策を提案していきます。

またこちらの記事 「要件定義×AIが変える受託開発の未来:SIerが知っておくべき自動化の潮流」では、最新のAIを導入することによって、システム開発の重要工程である要件定義の抜け漏れや手戻りを解消し、これらの問題をどう解決にどう繋げていくかについて解説しています。

そちらの記事もご覧いただき、自社でもAIを導入し2025年の崖を超えていきたいとお考えのご担当者様はZenTechの無料相談にぜひお申し込みください!

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