ZenTech
DX・レガシーシステム
2025-05-12

ITシステム2025年の崖:目前に迫ったDX課題の現状

2025年を迎えた「2025年の崖」の現状分析。政府・公的機関の最新動向、システム刷新の進捗、IT人材不足の実態、そして専門家の見解を通じて、日本のDX推進の現在地を詳解。

対象読者:企業経営者、IT部門責任者、DX推進担当者、政策関係者
ビジネス文脈:2025年を迎えたDX推進の現状と企業間格差の拡大
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システム刷新
経済産業省
IPA
企業格差
政府動向

はじめに

今回は2025年の崖:レガシー問題がもたらす危機と背景に続き、「2025年の崖」について、実際に2025年を迎えたいま、現状がどうなっているのか、最新のレポートや記事を元にまとめました。

目次

  • 政府・公的機関による最新動向
  • システム刷新の進捗とIT人材の現状
  • 2024年末〜2025年の報道動向
  • 専門家・業界関係者の声

政府・公的機関による最新動向

経済産業省は2018年の「DXレポート」で「2025年の崖」という危機を指摘し、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を呼びかけてきました。

その後も経産省やIPA(情報処理推進機構)は企業のDX状況を継続調査し、各種施策を展開しています。

直近ではIPAが「DX動向2024」と題した報告書(2024年6月公表)で、日本企業のDX取組状況が着実に向上していることを示しました。

「何らかのDXに取り組んでいる」企業は2021年度の55.8%から2023年度には73.7%に増加しており、DXによる効果が「出ている」と感じている企業も64.3%に達しています。

これは、DX未着手の場合に2025年以降最大年間12兆円の損失が生じ得るという警鐘(「年間12兆円の損失」)に対し、多くの企業がDX推進に動いた成果といえます。

実際、大企業ほどDXに積極的で、従業員1001人以上の企業では取組率が96.6%に達する一方、100人以下の中小企業では約44.7%に留まるなど規模間格差も報告されています。

政府も「DX銘柄」選定や「DX認定制度」創設などでDXを後押しし、2024年9月には経産省・IPA・デジタル庁が共同で「レガシーシステムモダン化委員会」を発足させました。

この委員会では、老朽化した基幹システム刷新の進捗が依然として鈍く、新技術(例えば生成AI)の活用がレガシーシステムの足かせで滞る現状に危機感を示しています。

政府機関からは「立ち止まっている企業をどう後押しするか」「DX人材育成や他産業からの人材シフト」が今後の焦点との指摘も出ています。

システム刷新の進捗とIT人材の現状

「2025年の崖」で懸念された主要因は、基幹系システムの老朽化・複雑化とそれを支えるIT人材の不足でした。

2025年時点で稼働から21年以上経つ基幹システムが全体の6割に達するとの予測どおり、多くの企業がレガシーシステムを抱えています。

DXレポートが訴えた「レガシーシステム刷新」について、企業の対応状況はまだ道半ばです。NTTデータ経営研究所の三谷氏は「古いシステムでも当面困らない」と先送りする企業も少なくなく、DXを経営課題として猛烈に推進する企業と関心の薄い企業に二極化していると述べています。

実際、DXへの関心自体は高まり自己診断に参加する企業は増えていますが、本質的なシステム更改は進んでいないのが現状です。

このため、基幹システム更新に踏み切れない企業では、新しいデジタル技術との連携が難しくなり、生成AIなどを活用したくても既存システムが障壁になるケースも出ています。

IT人材の面でも状況は逼迫しています。経産省の試算では2025年に約43万人のIT人材が不足するとされ、現実に人材確保競争が激化しています。

50歳以上のベテランITエンジニアの転職がこの5年で4.3倍にも増えており、老朽システムの維持・刷新に不可欠な熟練者への需要が高まっていることが窺えます。

この年代のエンジニアだけがCOBOLのような旧来言語スキルを保持している傾向も顕著で、実際プログラミング言語「COBOL」が履歴書上で上位に挙がるのは50代以上のみというデータも報告されています。

一方でDXを支える若手・専門人材の育成は追いついておらず、IPAの調査ではデジタル人材育成が「期待通り進んでいる」企業は全体の13%に留まるとの結果もあります。

IT人材不足は依然として2025年の崖の核心的課題であり、企業はレガシー保守要員の確保と同時に次世代のDX人材育成・確保に取り組む必要に迫られています。

もっとも、この数年でポジティブな動きもあります。多くの企業が老朽システムの危機に対応すべくERP(基幹業務システム)の刷新・導入を進めており、2025年までに一定のリプレースが行われたと評価する声もあります。

実際に「崖からの転落」を免れた企業も少なくなく、クラウド化や最新ERPへの移行などでシステム面のリスク低減を図ったケースが増えています。しかし、レガシー刷新に成功した企業ほど新たな課題にも直面しています。それは「システムを新しくすればDXは完了」という誤解から、肝心のビジネスプロセス変革や新価値創造が十分進んでいない点です。

DXレポートの本質であったデジタル技術を活用した事業変革が後回しになり、「まず基幹システム更新だけで安心してしまう」ケースもあると指摘されています。

このように2025年の崖を巡る現状は、単にシステム更新の有無だけでなく、その先の真のDX実現まで視野に入れた継続的な取組みが問われる段階に入っています。

2024年末〜2025年の報道動向

「2025年の崖」が提起された当初は一部専門家の間で認知されるに留まっていましたが、2024年になるとメディアでも頻繁に取り上げられるようになりました。

例えば日本経済新聞(電子版)では「2025年の崖」という表現が2019〜2023年の合計36件から、2024年だけで31件も登場しており、この問題への関心が一気に高まったことが分かります。2024年末から2025年初頭にかけては、各媒体が「いよいよ2025年を迎えた現状」を分析する特集記事を掲載しました。

「毎年12兆の損失⋯」デジタル"2025年の崖"本当か

東洋経済オンラインでは2024年12月に経営コンサルタントの大野隆司氏が「デジタル『2025年の崖』本当か」という記事を執筆し、DXレポートの警鐘を検証しています。

同氏はDXレポートの「年間12兆円の経済損失」という試算がやや大雑把な前提に基づくものであり、この点は発表当初から業界内でも指摘があったと述べています。

つまり、「12兆円」というインパクトのある数字は危機感を喚起するための最大値シナリオであり、必ずしも確定的な予測ではないという視点です。それでも大野氏は、数字の精度はともかくレガシー放置が巨額損失や競争力低下に繋がるリスク自体は本物だとし、引き続き油断なくDXを推進すべきとしています。

また記事では、政府試算どおりにDXが停滞すれば2030年にはIT人材不足が最大79万人規模に拡大しかねないことにも触れ、2025年以降も課題は続くと警鐘を鳴らしています。

IT専門メディアの視点

IT専門メディアでも多角的な報道がなされています。ITmediaビジネスでは2025年3月に「『2025年の崖』発表から7年、製造業はDXの歩みをどこまで進めたか」と題する記事を掲載し、IPAの調査結果を踏まえて製造業界のDX進捗を分析しました。その中で2023年度時点で企業の73.7%が部署単位も含め何らかのDXに取り組んでいること、しかし製造業では現場の属人的体制やレガシー設備の制約から全社的DXに至っていない例も多いことなどが紹介されています。

またZDNet Japanも2024年8月の記事でIPA報告書を読み解き、「DXの成果が出ている」と回答する企業が2023年度は64.3%に上ったことから「日本企業のDXは着実に成果を出し始めている」と評価しました。

一方で、依然「思うような効果が出ていない」と感じる企業が約6割存在する点にも触れ、成果の出せる企業と出せていない企業の差が広がっている現状を伝えています。日経クロステックや日経コンピュータなど専門誌でも、金融業界の勘定系システム刷新事例や、自治体・医療機関などでのDX遅れに関するレポートが相次ぎました。これら報道全体を通じて浮かび上がるのは、「2025年の崖」は単なる杞憂ではなく現実の課題として認識されているものの、企業ごとに対応状況はまちまちで、成功事例と遅滞事例が混在しているということです。

専門家・業界関係者の声

2025年という節目を迎え、業界の専門家からもさまざまなコメントが出ています。経産省のDX施策にも関与した三谷慶一郎氏は「DXレポートから5年で企業の関心は高まったが、レガシーシステム刷新は依然遅れている」と現状を評し、DX先進企業と停滞企業の二極化を指摘しました。

三谷氏は特に「自社でDX人材を育成するのが難しい企業への支援」「他業種からDX領域への人材移動促進」の重要性を訴えており、国としても立ち遅れる企業の後押し策が必要だと強調しています。

一方、IPAの委員会に参画する有識者からは「生成AIブームなど技術進化のスピードが増す中、日本企業の旧態依然としたシステム対応では追随できず産業競争力低下に直結しかねない」との危機感が示されています。

こうした声は、DXの環境整備を一層加速させるべきだという政府方針とも軌を一にしています。

冷静な視点での検証

民間のコンサルタントからは前述の大野氏のように冷静に実態を検証する意見も出ています。大野氏は「2025年の崖」はキャッチーな表現ゆえ独り歩きした面もあるとしつつ、「この概念が企業に与えた刺激は大きく、結果的にDX投資を促進した功績は無視できない」と評価しています。またデロイトトーマツの小林明子氏は、2025年の崖を「システム刷新=ゴール」と誤解する風潮を懸念しています。

同氏は「運良く崖から転落せずに済んだ企業ほど、今度はその新しい基幹システムを活かして真のDX(ビジネスモデル変革)に踏み出すことが肝要」と述べ、レガシー脱却はあくまでスタートラインに過ぎないとの考えを示しました。

要するに、2025年の崖という期限に追われてシステムを更新しただけでは競争優位は得られず、そこから先のデータ活用や業務改革こそが勝敗を分けるとの指摘です。

まとめ

総じて、2025年の崖は「危機」から「現実の課題」へと姿を変えつつあると言えます。危機感に駆られてDXやシステム刷新に動いた企業も多く、予想された最悪のシナリオ(大規模な経済損失の顕在化)を避けるべく奮闘した成果が一部では見え始めました。

しかし一方で、対応が間に合わなかった組織や、人材・予算の制約で動けない中小企業も存在します。専門家たちは「崖」の本質は単年の問題ではなく、この先も続く構造的なDX格差・人材不足の問題だと口を揃えています。2025年という節目を迎えた今、企業経営者に求められるのは「崖を乗り越えたかどうか」だけでなく、その先の持続的なDX推進によって真の価値創造ができているかを見据える視点だと言えるでしょう。

最後に、IPAは2023年のDX白書において「2025年の崖の克服とその先の競争力強化」がテーマであると総括しています。DX白書2023では、DX成功企業の共通点として経営陣のIT理解度向上や全社横断の人材戦略を挙げ、逆にDX停滞企業の課題としてレガシーシステムへの過度な固執や現場と経営の意識乖離を指摘しました。こうした知見も踏まえ、政府・業界とも2025年以降を見据えた次なるステップを模索しています。「2025年の崖」は終点ではなく、新たなデジタル変革のスタートであり、引き続き最新動向を注視しながらDXを深化させていくことが重要となっています。

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